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Scrivener for iPadユーザーのためのキーボード選び──(5)実機に触れた感覚

Reudo「RBK-2200BTi」

実際に製品を触ってみないとわからないものに、「持った感じ」「キーを押した感じ」という感覚的な要素があります。とくに後者は指先の感覚に影響するので、Scrivenerユーザーのキーボード選びとしては重要です。

感覚的なものがどの程度重要であるか、好みに合うのはどれであるのかは、人によりけりです。ある人にとっては最高のキータッチが、ある人にとっては最悪であることも少なくありません。触った瞬間に受け付けないと感じてしまうこともあれば、数日使ってみたら気にならなくなる場合もあるし、そもそも気にしない方もいます。前評判を聞いてもあまり決めつけてかからないほうがよいでしょう。

本来であれば店頭などでデモ機に触れて実機で確かめるのがよいのですが、いまどきの社会情勢では難しいでしょうし、そもそも有名であってもオンラインでしか販売されていない製品もあるので、購入前に確かめようがない場合もあります。しばらく使ってみないとわからないこともあるので、結局のところ、多少の失敗は覚悟して購入してみることも必要でしょう。

それでも、仕様から読み取れるものもあるので、購入前にはしっかりと確認することをおすすめします。

【チェックポイント】本体を持ったときの感じ

モバイル機器は、本体を持ったときの感覚も重視したいポイントです。持ち歩く荷物の量、バッグの種類、利用する交通機関など、ライフスタイルによっては重要な問題になることもあります。

①頑丈さ:ストレート型であればあまり気にする必要はなさそうですが、折り畳み型ではヒンジなどの強度が気になります。

②外装:持ち歩く機会が多ければ、色、素材や塗装、触感なども気になるかもしれません。

③重量感:重さ自体は仕様でわかりますが、持ったときの感覚とは別のものです。持ち歩くのが面倒になる感覚があると、本当に持ち歩かなくなってしまうおそれがあります。

④安定性:キーボードを置く場所によっては、タイプしたときの安定性も重要です。

筆者が購入したある折り畳み型の製品は、広げると背面に小さなゴム足がついていました。滑り止めにはよさそうですが、やや尖っているためか弾性があり、タイプするとキーボード全体がわずかに揺れるのです。気にしない方にはどうでもいいことでしょうし、理由はそれだけではありませんが、この製品はかなり早いうちにお蔵入りになりました。

【チェックポイント】キーを押した感じ

キーボード選びの最も重要な要素は、キーを押したときの感覚だろうと思います。単純に、気持ちよく押せるか、押して気持ちよいかということです。

こればかりは感覚的なものですし、好みも人によりけりですので、一概に良し悪しは決められません。それでも、これらの違いを知っておくと、購入前に目当ての製品の店頭デモ品を見つけられなくても、似たスペックを持つ製品に触れてみることで、ある程度予想できるようになります。ただし、これらの仕様は安価な製品では明記されていない場合があります。

①構造:構造の違いによって、パンタグラフ方式、メンブレン方式、メカニカル方式、静電容量無接点方式といった名前がついています。

パンタグラフ方式やメンブレン方式はコストを重視したノートパソコンや数千円程度の安価な製品で使われることが多く、たいていは「むにゅっ」「くしゃ」、あるいは、「ぱちぱち」「ぱたぱた」という感じになります。耐久性の点では劣りますが、タイピング音が小さく、小型軽量という利点もあります。安価なので、へたったら使い捨てるという割り切りもできるでしょう。

メカニカル方式は1万円台の製品で使われることが多く、耐久性に優れますが、相応のストロークと押下圧があります。「押した感」があるので文筆家に人気はありますが、モバイルで使いたいかどうかは環境によるでしょう。また、この方式では採用するスイッチによって感覚が大きく異なる点に注意が必要です。スイッチ感があるもの・ないもの、押下圧が強いもの・弱いものなどがあり、一般に軸の色によって呼ばれます。スイッチ感の強いものは「カツカツ」と大きな音がしますが、スイッチ感がなく押下圧の弱いものは静音性にも優れるものがあるのでモバイル用途にもよいでしょう。詳細は、メーカーの記事などで確かめてください。

→「CHERRY MXスイッチとは?」(ダイヤテック)

静電容量無接点方式は2万円以上する高価格品で使われることが多く、耐久性にとくに優れますが、相応のストロークと押下圧があります。

→「REALFORCEの特徴」(東プレ)

高いものほどよいように言われることもありますし、たしかにそういった面もありますが、筆者としては、好みと目的次第で選ぶか、環境で使い分ければよいように思います。

筆者のメインのキーボードはデスクトップのMacにつないだ静電容量無接点方式のものですが、これをファストフード店や特急列車のテーブルで使いたいとは思いません。逆に、昼に取材して夜にホテルで記事を書くような仕事であれば、優先的に選ぶことでしょう。

また、パンタグラフ方式やメンブレン方式は安物扱いされることが多いものの、少ない力で静かに打てる点がメリットです。筆者はテレビ番組の台本を書いているディレクターを何十人も知っていますが、「長時間書いても疲れないのでこれが好みだ」という方は何人もいました(もっとも、ほかの製品と比較したことがあるかどうかは知りません)。

②ストローク:キーを押し下げる深さを表します。値が大きいほど深く押し込む必要があります。

1.5mm程度だと「ぺたぺた」「ぱちぱち」という軽い感じ、3.5mmを超えるものでははっきりとキーを押し込む必要があるでしょう。個人的には、パンタグラフ方式やメンブレン方式で2mm程度あると「ぐにゃっ」という不安定な感覚が強くなってしまいます。

③押下圧:キーを押し下げるために必要な力を表します。値が大きいほど強く押す必要があります。高価格帯のものでは、とくに軽いものは30グラム、とくに重いものは60グラムほどです。

ストロークは浅いほど、押下圧は軽いほど高速入力できるという方がいます。確かに理屈から言えばそう思えますが、実際のタイピングでは「押した感じ」を好む方も多いですし、とくに高速な入力を求められるタイピストでも相応のストロークや重い押下圧を持つ製品を使っていることもあるので、結局は好みではないかと思います。

④静音性:喫茶店や交通機関など、公共性の強い場所で使いたい場合は、タイピングしたときの静音性も気になります。

筆者自身の経験からすると、静音性を大きく売り文句にしている製品であれば、おおむね静かなほうだろうと思います。たとえばメカニカル方式といえば以前はガチャガチャと大きな音を立てるものというイメージでしたが、静音軸は驚くほど静かです。もっとも、静音性を重視するのであれば、やはりパンタグラフ方式やメンブレン方式を優先して選ぶほうがよいでしょう。

これで基礎知識はおおよそ解説できたと思うので、次回からは個別製品のレビューへ移ります。5台とりあげる予定です。

(つづく)

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