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FAQ|『Scrivener入門』買ったけど挫折しました

Scrivener FAQ

【2022/10/04追記】末尾に「全部読まなくても大丈夫」を追加しました


まずは『Scrivener入門』をお求めいただき、ありがとうございます。

書いた本人が言うのも何ですが、『Scrivener入門』は手に取ってみると結構な厚さだし、3分の1くらい進んでもまだ本文を書き始めないし、ただのテキストエディタだと思っていたのに、こんなに勉強しないとダメなの……という方は、実は結構いらっしゃるのではないかと思います。

それでも、『Scrivener入門』はその名の通り「入門」であり、「どんなジャンルでどんな書き方をするしても、Scrivenerを使うならここまでは知ってもらいたい」という範囲を選んでいます。

著者としては全部読んでいただきたいですし、Scrivenerを学ぶことは執筆環境を整えることですから、原稿を書くよりも先に済ませることをおすすめしたいのですが、なかなかそうもいかないのが現実でしょう。

そこでこの記事では、『Scrivener入門』の読み方をステップ式でガイドします。途中で挫折した方も挑戦してみてください。

『Scrivener入門』はこれまで4冊刊行されていて、構成や文言は若干異なりますが、重要な章の内容と順序は共通です。すなわち、「導入/準備/インストール」「プロジェクトを始める」「構想を練る」「本文を書く・執筆」「本文を書く・資料管理」「出力」の6章です。

以下は『Mac ver.3対応改訂版』と『for Windows』の章番号を使ってガイドしますので、『for iPad & iPhone』やMac対応の初版をお持ちの方は適宜読み替えてください。

STEP 1)第1章「導入」を消化する

第1章の「導入」です。インストールと初期設定、購入、アクティベーション、日本語向け環境の設定のように、1度やれば終わりのものがほとんどですから、すぐに消化できるでしょう。

ただし、1-1の概略紹介は、ある程度Scrivenerに慣れてきた頃に読み直してみてください。具体的な操作を知った後から読んでいただければ、改めて納得してもらえることもあると思います。

STEP 2)第2章「プロジェクト」を消化する

次は第2章の「プロジェクト」です。もっとも重要な章ですから、ゆっくり読み込んで、しっかりマスターしてください。

バインダーは、MacでいえばFinder、Windowsでいえばエクスプローラーのようなものですから、これを知らなければ後が続きません。細かい操作手順はある程度読み流してもかまいませんが、読み飛ばさないことをおすすめします。

「こんなコマンドあるんだー」程度でも知っておけば、後で読み直せばいいのです。実際に執筆を始めると、そういった細かい操作を知っていると効率が格段に上がります。

読了した後に最初に読み返すときも、第2章の徹底消化をおすすめします。「こんなことできたんだ」という発見があるかもしれません。

バックアップもしっかり理解して設定しましょう。PCでは、どんなに重要な原稿も簡単に消える可能性がつねにつきまといます。それを防ぐにはバックアップを作るしかありません。

STEP 3)短いものを書いてみる

「プロジェクト」の章ではエディタの基本操作や連結表示も紹介していますので、第2章まで消化すればもう原稿を書き始められるはずです。2,000~4,000文字くらいの短いものを書いて、少しずつ画面や操作に慣れていきましょう。

STEP 4)第3章「構想」を消化する

第3章の「構想」で扱う内容の中心は、コルクボード表示、アウトライン表示です。また、既存原稿の読み込みや資料集めも扱っています。つまり、自分でアイデアを書き留めることから始める場合と、他人が作った資料の収集から始める場合、どちらでもこの章は重要です。

コルクボード表示やアウトライン表示があること、それらといつでも切り替えられることがScrivenerの特徴の1つですが、構想作りや資料収集には別のツールを使っている方は、この章は読み流してもかまいません。

逆に、プロット作りなど、構想作りにScrivenerを使っている方は、この章はとくに読み込んでください。とくにコルクボード表示の扱いは、本文を執筆しない方も意識して解説しています。

STEP 5)第4章「本文執筆」を消化する

第4章の「本文を書く・執筆編」は、エディタ操作に直接関わる章です。字下げ量や段間の設定のような、書き心地に大きく影響する内容ですので、原稿の本文を書く方はこの章をしっかり消化してください。

構想作りにしか使わない方は、ほとんど読み飛ばしてもかまいません。

STEP 6)短いものを構想から書いてみる

Scrivenerのコルクボードやアウトラインを使って、構想から本文執筆までScrivenerだけで完結させてみましょう。

また、ここまで来れば、書き方のスタイルにもよい影響が出てくるかもしれません。本文を分割して組み替えたり、カードを使ってみたり、第2章や第3章で紹介した機能を積極的に使ってみてください。

短い作品であればすべて頭の中に入っていて、わざわざScrivenerの機能を使うまでもないと思うでしょうが、短い作品で機能を習得しておくと、長い作品でも抵抗なく使えるようになるはずです。

STEP 7)第5章「本文管理」を消化する

第5章の「本文を書く・管理編」は、バインダーに収めたアイテムの管理に関わる章です。具体的には、数多くある分類方法の使い方、原稿の進捗管理、バージョン管理などです。検索置換や資料の参照方法など、執筆に必要な応用機能もここに多くあります。本文も書く方、構想作りにだけ使う方、どちらにとっても、「知らなくても使えなくはないが、知っているとあれこれ役立つ」章です。

Scrivenerに独特の機能が多い章ですが、興味がない機能に関しては、その節は飛ばしてもかまいません。ただし、いまは必要がなくても、いつかは必要になるかもしれません。読み飛ばすよりは、流し読みでも機能を把握しておくことをおすすめします。

STEP 8)本格的な執筆を始める

ここまでくれば構想作り、資料集め、執筆に必要な機能はほとんど把握できているはずです。本格的に執筆を始めてみてください。

作品が完成するまでには相応の時間がかかるでしょう。その間に「あの機能はどうやるんだっけ?」とか、「こういうときに使える機能があったような?」とかいうようなことも出てくるでしょうから、いつでも『Scrivener入門』を引っ張り出せるようにしてください。Mac改訂版やWindows版の電子書籍はリフロー型ですから、スマホで本文検索して手順を確認できます。

STEP 9)第6章「出力」を消化する

第6章の「出力」は、Scrivenerの最難関であるコンパイル機能です。日本語の組版機能がないに等しいとはいえ、推敲や組版のために出力するには、コンパイルするのが本来の手順です。

正直に言って、この章を読んで消化している方はあまり多くない、というか、かなり少ないと思います。あの設定画面を見ただけでイヤになるのも無理はありません。

しかし、コンパイル機能を使って出力形態を加工できるからこそ、自分の原稿を細切れにしたり、好き放題にメモをつけたり、遠慮なくマーカーを引いたりできるようになります。

書籍では実践的なサンプルを取り上げましたし、本サイトではサンプルファイルも無償配布していますので、ぜひ挑戦してみてください。

STEP 10)自分のスタイルを作る

『Scrivener入門』を1度読み終えても、それで終わりではありません。自分なりの執筆スタイルを作っていくこと、さらに、それとは別のスタイルを試していくときのために、いつでも参照できるようにしておくことをおすすめします。

著者の中には、一度構築したスタイルを崩さない方もいれば、作品のたびに別のやり方を模索されている方もいます。数えたわけではありませんが、後者のタイプのほうが多いような印象があります。

Scrivenerの使い方もそれと同じで、いまは必要ないと思った機能も、次の作品では使えるかもしれません。ときおり『Scrivener入門』を見返していただければ、発見もあるのではないかと思います。

流し読みのヒント

機能をマスターするには『Scrivener入門』を読んで実際に自分の手を動かして覚えるのがベストですが、あてもなく機能を覚えるほど退屈なことはありません。

とはいえ、いますぐ必要がなさそうなところは流し読みするにしても、後になって「たしかこんなときに使える機能があったような……」と思い出せる程度には印象づけておきたいものです。

そんなときは、本文を読まずにペラペラと、①見出しと、②スクリーンショットとキャプション(図の説明文)だけを眺めるのがおすすめです。ほとんどの機能にはスクリーンショットをつけていますから、見出しと図だけ見ていけば、「こんな機能がある」程度には印象づけできるでしょう。

【追記】全部読まなくても大丈夫

安い本ではありませんし、必死こいて書いた著者の建前としては全部読んでほしいところですが、実際には、全部読まなければ意味がない、なんてことはありません。前記したステップのどこかで中座しても、そのステップまではムダにはなりませんし、それでも十分役立つはずです。『Scrivener入門』だけでなくぼくの本は、途中で読むのをやめてしまっても、その部分までは「使える」ようになるように構成しているつもりです。

WordやExcelどころか、毎日使っているWebブラウザだって、ものすごい数の機能をもっていますが、全部の機能を知っているとか、あらゆる機能を使いまくっている人なんて滅多にいないはずです。日常的に使っている機能が全体の1~2割くらいでしかなくても、十分役に立っているでしょう。

Scrivenerもそれと同じです。ときおり、すべての機能を使い切る自信がないから手を出さないとか、全部を把握していないから執筆は後回しという方を見かけますが、そんなに重く考える必要はありません。2割程度しか使っていなくても十分役に立つでしょうし、むしろ執筆しながら『Scrivener入門』を読んでいくほうが問題意識が生まれやすく、「この機能ってアレに使えんじゃね?」と連想できるでしょう。本来実用書はそうやって「使う」ものだろうと思います。

第2章を消化した後に短いものを書くことをおすすめするのは、学習と実践を並行して進めることをおすすめするからです。「学校→就職」のようにきっちり段階を分ける必要はありません。次第によっては、第2章までで満足してしまっても読者としては問題はありません。著者としては、いつかはその後も読んでほしいところですが……。

まとめますと、Scrivenerで原稿も書く方なら第2章と第4章、プロットを考えるだけなら第2章と第3章、もっと絞り込むなら、第2章だけでも消化できれば、十分にScrivenerを役立てていただけると思います。その後の章を消化するのは、いくつか作品を書いた後からでもかまわないでしょう。

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