日本語のユーザーとして最も気になるのは、日本語への対応でしょう。一定期間使い込まないとわからないことも多いと思うので、暫定版としてお読み頂ければと思います。
ここでは、①インターフェースの日本語化、②日本語の原稿の執筆、③日本語組版ルールへの対応、の3点に分けて紹介します。
インターフェースの日本語化
まずは見た目、①インターフェースの日本語化です。ver.3ではインターフェースの多言語化が進み、公式で日本語にも対応しましたが、結局「Preview Release」となっていて、英語のまま残っているものも多数あります。たとえば[ファイル]メニューを見ると、[エクスポート]はカタカナになっているのに、[Import]は英語のままという中途半端ぶりです。ほかにも、[印刷プレビュー][使用中のドキュメントを印刷]は日本語で、[Page Setup…][Print Settings…]は英語だったりします。
ざっと見た印象では、環境設定は半分以上が、コンパイルに至っては9割以上が未訳です。いつか将来のアップデートで日本語化を進めてほしいものですが、ベータプログラムは3年半もあったうえに、フランス語やスペイン語さえもPreview Releaseとなっているので、あまり過剰な期待はしないほうがよいかもしれません。
もしも日本語と英語が混在するほうが面倒と感じる場合は、英語のみの表示へ変更することも検討してください。アプリ内の表示言語を変更するには、[ファイル]→[Options…]を選び、「全般」→「Language」カテゴリを選び、「言語」の設定を「English」へ変更します。
見た目の問題にはもう1つ、フォントの問題があります。デフォルトでインターフェースに使われているフォントは、英語環境のWindowsでデフォルトに使われている「Segoe UI」であり、日本語の表示には不向きです。下記の記事を参照して日本語環境に合わせることをおすすめします。
→「Scrivener FAQ|メニューやダイアログの文字が読みづらい(Win ver.3)」
インターフェースは英語表示で使う場合でも、バインダーやコルクボードなどでは日本語を使うほうが一般的でしょう。それらで使うフォントは環境設定の「表示」カテゴリーで変更できます。
日本語の原稿の執筆
②日本語の原稿の執筆については、おそらく何も問題はないと思われます。ただし、デフォルトの設定が英語向けであるため、日本語の文章を執筆するには環境設定をいろいろと変更する必要があります。
デフォルトではスペルチェッカーが機能しているため、日本語の文章を書くと下線が表示されますが、環境設定を変更すれば消えます。
→「Scrivener FAQ|文章の下に表示される点線を消したい(Win ver.3)」
同じ「コレクション」(Correctionです。Collectionではありません)カテゴリーには日本語の執筆には不要な設定がたくさんあるので、必要に応じてオフにしてください。
メインエディタの下端には単語数が表示されていますが、これは文字数へ変更できます。環境設定の「編集」→「Options」→「Live counts show」を「文字数」へ変更します。
本文で使用するフォントも、デフォルトでは英語向けですので、好みのフォントへ変更しましょう。Scrivenerは本文をRTFベースで管理しているため、Wordのようなワープロと同様にフォント、サイズ、行間、段間などを設定できます。図のように書式を設定するバーが表示されていないときは、[表示]→[テキストの編集]→[書式バー]オプションをオンにします。
具体的に使用するフォントについてここで詳細を書く余裕はありませんが、Windowsのみで執筆するのであれば何でもよいようです。iOS版のScrivenerと同期するのであれば、IPAex明朝またはIPAexゴシックをおすすめします(iOS版のScrivenerへフォントをインストールする手順は、拙著『いつでもどこでも書きたい人のためのScrivener入門 for iPad & iPhone』の「4-5-3 任意のフォントを追加する」印刷版では132ページを参照してください)。
Scrivenerでは、新しいテキストを作ったときにデフォルトで使われる書式をユーザーが設定できます。環境設定の画面は日本語と英語が入り交じって面倒ですが、快適な執筆環境作りにも強く影響するので、がんばって作り込みたいところです。この手順は長くなるので、いまは省略します。
日本語組版ルールへの対応
③日本語組版ルールへの対応については、新しい機能はありません。Mac版では縦書きに対応しましたが、Windows版では縦書きに対応しません。Mac版で作成した縦書きのプロジェクトをWindows版で開くと横書きになりますし、縦書きと思われるメニューも見つかりません。
ただし、Mac版だけが縦書きに対応したといっても、意地悪く言えば縦書きになるだけです。禁則文字のカスタマイズ、ルビ、傍点、縦中横、割注など、日本語特有の組版ルールには対応しません。「何文字×何行」といった伝統的な文字数指定もできません。
このため、日本語特有の機能や設定については、ユーザーが工夫する必要があります。たとえば、ルビの指定には青空文庫タグ、強調の指定にはMarkdownを使うなどの方法が考えられます。また、縦組みのメディアで発表する場合は、Wordや一太郎、InDesignなど、縦組みをサポートするアプリケーションを使ってレイアウトする必要があります。