※この記事の価格はすべてMac App Storeのものです。
【要約】充実した機能を考えれば、競合製品と比べても高くない。むしろ、自分が何を必要としているのか見極めるべき。
解説書も書いている筆者がこれに答えるのはポジショントークもいいところですが、自腹で買っているエンドユーザーの1人として答えてみましょう。
たしかに、Mac版が5,980円、iOS版が2,440円というのは、まず絶対的な価格として、何も考えずに買える値段ではありません。
よく比較されるのがテキストエディタです。それにワープロも含めて、価格を比べてみましょう(価格はすべてMac App Store)。
- CotEditor、mi、TatePadは無料。
- Hagoromoは2,200円。stoneは3,060円。
- Bear Proは年間1,500円。Ulyseesは年間4,500円。
- egword Universalは8,000円。Wordは単体では買えないようなので、Office 365 Soloは年間12,800円。
さて、テキストエディタだと思うとScrivenerの価格は非常に高いように見えますが、そもそもScrivenerの機能はテキストエディタだけではありません。
カードを使った画像も貼れるコルクボードや、アウトラインを使った発想・構想まとめの機能もあります。しかもこれは表示を切り替えているだけなので、執筆途中や脱稿寸前になっても同様に使えます。
コンパイラーを使えば、検索置換やプレースホルダータグによる前処理を行ったうえで、単一の原稿から、TXT、DOCX、PDF、HTML、Markdown、MOBI、EPUBなどへファイル形式を選んで出力できます。スタイルや書式設定を使ったレイアウトもできるので、自動組版機能もあるといえます。最終的にDTPアプリでレイアウトする場合でも、素っ気ないプレーンテキストで読み直すのに比べれば、自分で推敲するときに役立ちます。
長期間にわたる執筆を補助する機能としては、パーツごとの履歴、文字数と日数を計測した進行管理、検索条件を保存して自動更新できるコレクション機能、ラベル/ステータス/キーワード/カスタムメタデータなどの豊富な分類機能などがあります。
ほかのツールとの併用もできます。脚注とコメントはWordと互換性があるので、Wordしか使っていない編集者や指導教官へ渡して意見をもらうときにも使えます。Dynalistなどで使われるOPMLの読み込みと書き出しにも対応しています。TXTの書き出しと読み込みは同期もできるので、書式などの機能を割り切れるのであれば、Gitを使ったバージョン管理もできるはずです(筆者は興味がないのでやったことはありませんが)。
Scrivenerをテキストエディタと思っていると確かに割高に感じるでしょう。「(テキストエディタと比べると)高い」と言われてしまうのは、Scrivenerがまだまだテキストエディタと思われていることの証左でもあります。
しかし多くの機能があることを知れば、競合製品と比べても、「買い切りで約6,000円」という値段は決して割高とはいえないように思います。たとえすべての機能を使い込むことはなくても、必要な方には元は取れるのではないでしょうか(そもそも今どきのアプリで、すべての機能を使うことなどもはや無理です)。
とはいえ、不要なものを買うことほどムダなことはありません。しかも、機能が多いということは自分なりに使いこなすのにも時間がかかりますし、根本的な問題としてはルビをはじめとする日本語ローカルの組版ルールにほとんど対応していないこともあります(これらのデメリットは著書でもはっきり書いています)。
そこから先の課題は、自分が本当に必要としているものを再考することでしょう。
長文作品を書こうというような方が、他人の言うことを鵜呑みにすべきではありません。もちろん、冒頭でポジショントークと宣言したこの記事も含めてです。自分の作品の執筆に役立つかどうかを判断できるのは、自分だけです。ぜひご自身の手で確かめてください。
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