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Scrivener for iPadユーザーのためのキーボード選び──(2)基本カタログスペックの検討

ひとくちにiPad用キーボードといっても製品は数多くあるので、評判だけでいきなり指名買いすると、失敗するおそれも大きくなります。たしかに、実際に触ってみたり、使い込んでみたりしないと分からないことも多いのですが、おおむね次の順序で条件を設定し、段階的に絞り込んでいくとよいでしょう。

  1. 商品情報で分かる程度の条件
  2. 店頭で触れて分かる程度の条件
  3. 一定期間使って分かる程度の条件
  4. 長期間使い込んで分かる程度の条件

それぞれの条件の内容を決めるには、具体的なチェックリストが必要です。今回はメーカーやショップのWebサイトを見て絞り込める程度、すなわち「1. 商品情報で分かる程度の条件」のうち、基本的なものを検討します。

(以下、このページで紹介する商品は参考情報です。筆者が購入したり試用したりしたものではありません。リンク先はアマゾンアフィリエイトで、収益はサーバーの維持に役立てています)

【チェックポイント1】キー数とサイズ

最初にキーの数と全体のおおよそのサイズを検討しましょう。これは商品写真を見ればすぐに判別できます。

一般的にキーボードのキー数とサイズは、次の4種類に分けられます(定着した名称はないようですが、便宜的に名前をつけました)。

①フルサイズ型

……テンキー、矢印キー、Home/End/Page Up/Page Downキーなどを備えた、デスクトップPCで広く使われているもの

もしも持ち歩く範囲が限定的であれば、思い切ってフルサイズを選ぶのもよいでしょう。端末が小さいからといって、大きなキーボードを使っていけないことはありません。キーがしっかりしたタイピング向きの、本格的な製品も多くあります。逆に、荷物を軽量化したいか、頻繁に持ち歩くのであれば、よほど数字の多い原稿を入力するのでないかぎり、これを選択する理由はないでしょう。

②テンキーレス型

……フルサイズ型からテンキーを省略したもの

ほとんどのScrivenerユーザーにテンキーは不要だと思いますが、矢印キーやPage Up/Page Downキーは好みが分かれそうです。もしもそれらのキーを頻繁に使う場合や、独立したキーがほしいような場合は、このタイプを検討してもよいでしょう。

ただし、そもそもこのタイプの製品はあまり多くなく、Bluetooth対応・iPad対応の製品はさらに少なくなります。

③コンパクト型

……テンキーレス型からさらに多くの機能キーを省略したもの

このタイプでは、矢印キー、Home/End/Page Up/Page Downキー、製品によってはさらにF1〜F12のファンクションキーなどを省略しています。その一方で、別途追加したFnキーと特定のキーを同時押しすることで、それらのキーを代用するものが主流です。たとえば、Page UpキーはFn+↑キー、F1キーはFn+1キーというぐあいです。

デスクトップを常用している方はFnキーとの同時押しを嫌う場合が少なくないようですが、ノートPCのキーボードに似ているので、違和感なく使える方のほうが多いかもしれません。

おそらく、iPad対応キーボードで最も製品が多いのがこのタイプです。1000円前後の安価なもの、Apple「Magic Keyboard」に似たものから、Happy Hacking Keyboardをはじめとする高価なものまで、製品の数も豊富です。

④ウルトラコンパクト型

……キーのサイズ自体を小さくすることで大幅な小型化を図ったもの

キワモノ扱いされることが多いのですが、慣れれば相応の速度で入力できる方はいるようです。かつて、BlackBerryをなかなかの速度で打っている人を見たときは驚きました。ポケットに入るサイズのものが多いので、執筆スタイルによっては頑張って慣れる価値があるかもしれません。

とはいえ、そもそも端末自体が相応の大きさであるiPadと組み合わせて使うことを考えると、③コンパクト型から選ぶのが一般的でしょう。

【チェックポイント2】折り畳み型/ストレート型

コンパクト型キーボードの中には、2つ、または、3つに折り畳めるものがあります。持ち運ぶ時は小さくできることが特徴です。

ただし、タイピング時には接合部の曲げや、全体的なたわみが気になる場合があります。また、キーボードを安定して置くことができるテーブルや机がない環境では、十分なタイピングはかなり難しいでしょう。たとえば、通勤電車で膝に載せて使うのは現実的とは言えません。堅い鞄を常用して机代わりにできる方にはよいのかもしれません。

もう1つ注意すべきはキー配列です。折り畳み型ではどこかで本体を折りたたむ必要があるため、キーの位置やサイズを多少なりとも無理した製品がほとんどです。たとえば次の製品はYキーやReturnキーの幅はかなり狭くなっています。機能は豊富で慣れることができれば便利そうですが、筆者は自信がありません。

筆者の場合は、折り畳み型ではキーを押したときのたわみが気になってしまうため、折り畳み型は原則として避けています。最初に使い始めたPCがデスクトップだったこともあり、キーを押す力もそもそも強いようです。ノートPCをメインにする方であれば違和感は少ないのかもしれません。

次の製品はかなり割り切ったデザインをしていますが、文字キーは均等なサイズですので、折り畳み型が必要になるほど携帯性を重視するようになったら買ってみたい気もします。割り切れるポイントと割り切れないポイントは好み次第ですので、買ってみないと分からないでしょう。

なお、折り畳み型の製品は、耐久性の点では期待しないほうがよいでしょう。

【チェックポイント3】キーピッチ

キーピッチとは、キーの間隔のことです。一般的なデスクトップPC用のキーボードは19mmですが、小型のノートPCや、モバイル向けとされている製品には、より狭いものが多く見られます。たとえば、文書入力専用端末として有名なキングジム「ポメラ」シリーズは17mmです。逆に、折り畳み型でも19mmの製品も増えてきているようです。

キーピッチが狭ければそのぶんだけ製品を小型化・軽量化できるので携帯性は向上します。タイピング時に指を移動する距離が短くなるので、より高速に入力できるという方もいます。手が小さい方に聞くと、19mmのノートPCよりも、17mmのモバイル用キーボードのほうが打ちやすいと言われる場合があります。

ただし、キーピッチが狭いということは、その分だけ指の動きに繊細さが求められることになります。また、デスクトップ用のキーボードを常用している方にとっては、タイピングに違和感を感じる原因になる場合があります。

一般的に、キーピッチは商品仕様として明記されています。見た目ではまず分かりませんし、販売店の製品紹介では省略されていることがあるので、メーカーの公式サイトなどで確かめましょう。

このとき、きちんと数値で確認することをおすすめします。たとえば10インチ・無印iPad用のケース兼キーボードであるロジクール「SLIM FOLIO」の公式ページでは「ゆったりなキーが横に長く広がり、手を自由に動かせるため、長時間快適かつ柔軟なタイピングが可能です」と書かれていますが、「技術仕様」を見るとキーピッチは17mmと書かれています。ちなみに、Apple製のキーボードの製品紹介にはキーピッチは記述されていません。

筆者の場合は、「キーピッチが19mm」を必須条件としています。17mmの製品でも打てないことはないものの、ミスタッチを防ぐには過度の緊張が必要でした。あげくタイピングに集中してしまうあまり、文章を考えられなくなってしまうのです。19mmよりも狭いキーボードはメーカーの違う3種類の製品で試しましたが、いずれも同じでした。なかでもロジクール「K380」はコンパクトさや機能が魅力的で、キーピッチは18mmと1mm短いだけなので慣れでカバーできないものかと考えて数日使ってみましたが、どうしてもダメでした。

写真:ロジクール「K380」

製品を選ぶときは、自分が気持ちよくタイピングできるキーピッチはどれくらいなのか、あるいは、そもそもキーピッチなど気にしないのか、調べておきましょう。たとえば、まず自分が常用しているキーボードのピッチがいくつなのかを調べ、別の製品をしばらくの間使ってみると分かると思います。合わなかったら売り飛ばすつもりで、数点買ってみるしかないでしょう。

【チェックポイント4】電源

Smart Connectorを使うものは電源不要ですが、Bluetoothキーボードは無線接続ですから電源が必要です。電源には、乾電池を使うものと、充電池を内蔵するものがあります。

乾電池は外出先でもコンビニなどで簡単に購入できるうえ、切れてもすぐに交換できるので充電を待つ必要がないというメリットがあります。一方、スペアを持ち歩くときは荷物が増えます。

充電池式は、以前は電源のないところで充電する方法がなかったのであまりメリットはなかったのですが、スマートフォンの時代になって充電池を持ち歩くことが増えたため、外出中に電池が切れても以前のように困ることはなさそうです。むしろ「いつでも充電できる」ことがメリットと言われる場合があります。

また、乾電池を使わない分だけ本体を薄くできるため、とくに薄さが求められるケース一体型の製品(あるいは、マグネットなどで一体化して使える製品)には、充電池式のものが多いようです。

ただし、実際に販売されているキーボード単体の製品は、ほとんどが乾電池式のようです。

キーボードを選ぶときは、乾電池式と充電池内蔵式のどちらなのか、乾電池式であれば単3と単4のどちらなのか注意しておき、スペアも用意しましょう。

筆者の場合はとくに意図して選んだわけではないのですが、実際に購入した製品はすべて乾電池式でした。また、頻繁に使うキーボードではエネループを使っています。

充電池式の製品で、充電池を交換できるものは見たことがありません。ただし、そもそも充電池式の製品は薄型軽量であることを優先する製品がほとんどで、そのぶんだけ耐久性も後回しであり、結局電池を交換する必要もないと思っておくのがよさそうです。

【チェックポイント5】Bluetoothのバージョン

Bluetoothにはバージョンがあり、数字が大きいほど省電力であり、体感的な反応もよくなります。

多く販売されている製品は、3または5がほとんどのようです。マイナーバージョンをいろいろ示している場合がありますが、取り立てて気にするほどではないと思います。3でもかまいませんが、いまから新しく買うなら、どちらかといえば5のほうがおすすめです。

ほかに注意したいカタログスペックには、最大の難関であるキー配列がありますが、長くなったので次回にします。

(つづく)

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