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Scrivener for iPadユーザーのためのキーボード選び──(6)ロジクール「K480」

今回から個別製品のレビューに入ります。いまのところ、5台のキーボードを取り上げる予定です。

記事の執筆にあたってはできるかぎり検証しましたが、誤りがないことを保証するものではありません。購入にあたってはご自身の責任で判断していただきますようお願いします。

製品概要

1台目はロジクール「K480」です。品番では兄弟分のように見えるもののまったく異なる同社「K380」にも少し触れます。

メーカーの製品紹介:K480K380

まずチェックポイントに従って見ていきましょう。

キー数とサイズ:コンパクト型をベースにしていますが、音量調節などのショートカットキーを兼ねたファンクションキーが配置されているので、コンパクト型としては多いほうです。極端に小さなサイズのキーはないので、鉤括弧を打つときも問題はなさそうです。ただし、長文の入力には、Fn+矢印キーあたりに、Home/End/Page Up/Page Downを割り当ててほしかったです。

形状:ストレート型。タブレットやスマートフォンを差し込めるスタンドを内蔵しています。角度は調節できません。

キーピッチ:19mm。そのぶんだけ大柄です。個人的にはこれは必須条件でした。K380のデザインやカラーバリエーション、静かなタイプ音はとても好みだったのですが、キーピッチが18mmであるためあきらめました。本当に残念です。

電源:単4乾電池2本。

Bluetoothのバージョン:3.0ですが、反応は良いほうだと思います。3台の端末とのマルチペアリングです。ダイヤルで切り替えるので、いまつながっている端末が分かりやすい点はメリットです。筆者の環境では不要ですが、たとえば居間に置いて家族で共用するなど、他人と共有する使い方をするときは便利そうです。

キー配列:左下に「Fn」キー、1キーの左隣に全角/半角キー、Aキーの左隣にCaps Lockキーがある、Windowsノートパソコン風です。iPadで打つ機会はあまりなさそうですが、Command/Option/Controlキーの間にFnキーが割り込む点は意識しておく必要があるでしょう。iOSとmacOSはUS配列ですが、WindowsなどはJIS配列ですので、その両方が書かれているキーがあります(詳細は後述)。

対応OS:iOSに正式対応しています。かな、英数、Commandキーなどがあります。

本体を持った感じ:

①頑丈さ:ストレート型ですので不安はありません。頑丈というよりも無骨というほうがふさわしい印象です。

②外装:キーはざらつきのある加工がされていますが、本体はテカテカしています。人によっては安っぽく見えるかもしれません。白と黒のカラーバリエーションがあります。筆者は視認性の良さそうな白を選びましたが、実際には黒のほうがよかったようにも思います(後述)。

③重量感:電池を含めて815グラムあります。スタンドを兼ねているため、重さのある部品を中に入れて重くしているようです。この部品を取り出して軽量化してみたいとは誰もが思うのでしょうが、通電して実際に機能しているらしいので、軽いものと差し替える必要があるそうです(改造記事を出している方のブログは検索すればすぐ見つかります)。筆者はとても改造する自信がありません。しかし、無改造のK480とiPad Airを合わせたら、MacBook Air(1.29kg)を超えてしまいます。よほどこだわりがなければ、どこかの部屋へ常備しておくか、屋内でのみ持ち歩くような使い方になるでしょう。

④安定性:本体が大きく重いので、安定感は十分です。背面のゴム足は大きめで安定しています。

写真)K480とiPad miniの組み合わせ。iPadのケースが薄いのでスタンドを活用できる

キーを押した感じ:

①構造:パンタグラフ式。

②ストローク:2mm。キーに触れるとわずかに遊びがあります。こういう製品はよくありますが、個人的にはぐらつきが気になります。

③押下圧:60グラム。個人的には「押した感」があってよいのですが、人によっては疲れるかもしれません。

④静音性:タイプするとガシャガシャ鳴ります(後述)。

タイプ音が気になる

K480で最も困ったのはタイプ音がうるさいことです。そもそもそういう製品ではないのでしょうし、人の感覚はいろいろだと思いますが、喫茶店で原稿を書いたり、オンライン会議の書記をするのは無理だと思います。他人がいなくても自分で音が気になってしまうので、長文を打つには使いたくないレベルです。押下圧が60gと強いため、つい強く打ってしまうことも、音が大きくなる理由でしょう。

ちなみにK380は、同じパンタグラフ構造、押下圧60gでありながら、ストロークは1.5mmで、かなり音は小さく、喫茶店で打っていても悪目立ちしないと思います。丸いキーのデザインは案外と打ちやすいように感じました。

US印字が見づらい

もう1つ大きな困りごとはキーの印字です。この製品は、Windows/Android/Chrome OS用と、iOS/macOS用でモードを切り替えられて、ペアリング用に専用キーまで配しています(長く押すとペアリング開始、短く押すとモード切り替えになります)。しかし前者はJIS配列、後者はUS配列として、人間が読み替える必要があります。

たとえばJIS配列の「@」キーを見ると、iOS用のUS配列で入力されるキーがあわせて印字されていて、iPadで使うときはこちらを読む必要があります。しかもUS配列用の印字は小さくて薄いので、老眼の筆者にはほとんど見えません。たまに丸括弧を打つようなときは「えっと、US配列だから……」と考える羽目になります。

写真)US配列のキーとJIS配列のキーが両方印刷されている

US配列にも慣れてはきましたし、そこに目的のキーがあるとわかってはいるものの、別の文字が濃く印刷されていれば目に入ったときに瞬間的な迷いが生まれます。鉤括弧くらい打つことが多いキーであればまだしも、セミコロンの印字を見ながらコロンを打つのはまだ心理的な負荷があります。

しかも、併用するOSがmacOSであればそれも同じUS配列ですが、Windowsの場合はJIS配列ですから、接続する相手のOSに応じて人間がキー配列を切り替える必要があります。iPadとWindowsの併用派にはおすすめしづらいです。

白いバリエーションを選んだのは視認性の良さを考えてのことでしたが、US配列の印字のことを考えると黒のほうがよかったのかもしれません。

Bluetoothの警告

特定のBluetoothデバイスをつなぐと、ある時期から「設定」アプリの「Bluetooth」に、「Wi-FiおよびBluetooth接続に影響する場合があります」と表示されるようになりました。

キャプチャ)OSからの警告メッセージ

→「Bluetooth 対応のマウスやトラックパッドを iPad に接続する」(Apple)ページ中、「接続に関する警告が表示される場合」の見出しを参照

登録する機器を減らしてみましたが、この表示は消えませんでした。いまのところとくに問題はなさそうですが、本当に速度低下などの影響がないのかどうかはわかりません。

ちなみに、K480の1年2か月後に発売されたK380では、このような警告は表示されません。

個人的な使い方

角度は調節できないもののスタンドの安定感は十分ですので、居間に置いてメールの返事を書いたり、物理的なキーボードがほしくなる程度の長さの思いつきを書き留めるには重宝しています。ただし、長文を書く場合は別のキーボードを使いますし、意図せず長く書くことになった場合はタイプ音を自分でうるさく感じて途中で変えることもあります。

iOSの設定を変えて、Caps LockキーはControlキーへ変更しています。Caps Lockキーは不要なので、Controlキーが2つある状態です。

結語

K480は2014年9月発売のロングセラーモデルですが、キー配列をユーザー自身で読み替える必要があるなど、古さは否めません。筆者は割り切ったうえで便利に使っていますが、いまから新しく買うにはおすすめしづらいです。

とはいえスタンド一体型キーボードは少ないので、タイプ音が静かで、マルチOS自動対応のリニューアルモデルを期待したいところです。

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