個別製品レビューの2台目は、エレコム「TK-FBM093SBK」です。
メーカーの製品紹介:TK-FBM093SBK
長いので以下「FBM093」と略記します。
お約束:記事の執筆にあたってはできるかぎり検証しましたが、誤りがないことを保証するものではありません。購入にあたってはご自身の責任で判断していただきますようお願いします。
製品概要
まずはチェックポイントに従って見ていきます。
キー数とサイズ:コンパクト型で、音量調節などのショートカットキーを兼ねたファンクションキーが配置されています。また、Fn+矢印キーでHome/End/Page Up/Page Downキーも打てます。
形状:ストレート型。本体裏側にある乾電池収納スペースがスタンドを兼ねているので傾斜があります。角度は調節できません。
キーピッチ:19mm。ムダなスペースがないので見た目にもコンパクトな印象です。
電源:単4乾電池2本。
Bluetoothのバージョン:3.0で、3台までペアリングして切り替えて利用できます。残念ながら反応がよいという印象はありません。むしろ、時折、他の機種にはない引っかかりや取りこぼしを起こします(後述)。
対応OS:iOSに正式対応しています。
本体を持ったときの感じ:
①頑丈さ:持ち歩くとしても不安はないでしょう。
②外装:ざらつきのある仕上げで、安っぽい印象はありません。キーの印字ははっきりしています(後述)。
③重量感:電池抜きで396グラム。手に持った時に重いという印象はありませんが、背面のスタンドになる部分が大柄なのでかさばるように感じるかもしれません。
④安定性:ゴム足は硬めで良好です。ズレそうな印象がしてドキドキすることはありません。
キーを押した感じ:
①構造:メンブレン式。押した感じはやや硬めです。
②ストローク:2.6mmあるので、見た目の印象よりも深く感じます。
③押下圧:記載がありませんが、ストロークの深さもあり、軽いという印象はありません。
④静音性:商品紹介ページに「Bluetooth静音ミニキーボード」とあるくらいで、FBM093最大の売り文句はこれでしょう(後述)。
静粛性は期待通り
FBM093の最大の売り文句である「静音」ですが、筆者としては期待通りだと思います。「カチャカチャ」とも「カツカツ」とも「ガシャガシャ」とも言いません。図書館は言い過ぎでしょうが、小さくBGMが流れる純喫茶で使っても、音で悪目立ちすることはないと思います。会議中に書記を担当しても大丈夫でしょう。
音の大きさをムービーで伝えてもらうのは難しいですが、公式サイトにある「静音キーボードを騒音計で測ったみた」(ママ)を見て期待する程度には静かだろうと思います。
JIS配列でiPadに打てる
FBM093はiOS、macOS、Windows、Androidに対応しますが、キー配列はWindowsノートのJIS配列そっくりで、iOS対応品であれば普通見られるUS配列の印字がありません。商品紹介ページでははっきり書かれていませんが、つまり、iPadでもJIS配列で打てるのです。
接続する端末のOSごとにFn+Q/W/Eキーでモードを切り替えると、送信する文字も変わります。このようなモード切替は、たいていは「かな/英数」と「変換/無変換」など、機能キーしか入れ替えてくれないのですが、JIS配列とUS配列の文字キーの違いを吸収してくれるのは非常に便利です。ロジクール「K480」では「人間がキーを読みかえろ」でしたが、FBM093は「人間はJIS配列だけ覚えればいい、モードを切り替えてくれたらこっちで対応する」というわけです。
さらに、キーの印字も視認性に優れています。まず、文字キーについてはJIS配列だけですので、US配列の文字を併記する必要がありません。機能キーについても公平にデザインされていて、たとえばスペースキーの右側を見ると、「変換」と「かな」のどちらも同じサイズなのでどちらも見づらくはありません。ユーザーはおそらく自分が慣れているほうの印字を読むでしょうから、Windowsユーザーであれば「変換」、Macユーザーであれば「かな」を見つけて安心して押すことでしょう。
たいていの製品はUS配列とJIS配列、Windows系とMac系の両方を併記する上に、そのどちらかを優先するので、他方の印字は見づらくなります。K480でiOS用の印字が薄すぎて見づらかったことを思い出してください。FBM093がぱっと見てスッキリした印象を持つとすれば、その理由はここにあります。
ただし、なぜかCommandキーとOptionキーは、普通のMacの配列と逆になっています。どうしてここだけ残してしまったのかと残念に思いますが、いまはiOSの設定で入れ替えられますし、どうせこのあたりのキーはMacユーザーなら指が覚えているはずですので、大した問題にはならないでしょう。WindowsとiPadを併用する方は、ぜひ逆にしてみてください。
文字の取りこぼし
一方、FBM093で最大の問題になりそうなのが、文字の取りこぼしです。「あれ、字が入らないな」と思っていくつもキーを打っていると、十秒程度経ってからまとまって入力されたりすることがあります。また、接続端末を切り替えたわけでもないのに、まれに同じ語句が勝手に二重入力されることがあります。
当家は無線を使う端末が多く環境が悪いですし、これらの問題がそれほど頻繁に起きるとは言いませんが、気分が乗って入力速度が上がっていくと文字が落ちて誤変換したりするので、長文を書いていくと興が削がれることが少なくありません。
これらの原因がどこにあるのか、通信なのかキー構造なのかはわかりません。ただ、二重入力の様子を見ると、バッファの使い方に問題があるような印象です。
文字入力に関連する問題としてはもう1つ、iPadでSlide OverやSplit Viewを使うと、入力欄をタップして目的のアプリをアクティブにしているにもかかわらず、バックグラウンド側のアプリに文字が入力されてしまうことが頻繁に起こります。これも他のキーボードでは経験したことがないので、FBM093固有の問題ではないかと思います。【2021年1月24日追記】ほかのキーボードでも発生しました。
この問題があると、たとえばScrivenerで原稿を書いていて、ちょっと物書堂の辞書を引きたくなり、Slide Overで呼び出したとします。このとき、検索キーワードを辞書に入れたつもりが、Scivenerに入ってしまいます。
個人的な使い方
静音性は大変魅力的ですが、文字の取りこぼしはどうにもなりません。また、特別小型軽量というわけでもないので、正直に言って個人的な使用頻度はあまり高くありません。
ただ、自分のメインマシンにつなげているキーボード(Realforce)は決して静かではないので、ネット通話でうち合わせをするなど、とくに静音性が必要なときは重宝しています。最近の実売価格は2000円台半ばですから、ときおり家人が寝ているそばで原稿を書きたくなることがあるなど、宅内で静音性が必要という場合は、予備機として持っていても損はないように思います。
キー配列は、Caps LockキーをControlに割り当て、CommandとOptionを入れ替えています。
結語
FBM093の発売は2017年10月ですので、Bluetooth 5.0対応など内部的な高速化を図った後継製品を期待したいところです。静音性を売り文句にしたフルサイズのキーボードは最近いくつも発売されていますが、モバイル向けのものは他社製品を含めてもわずかしかありません。静音性が重要でも、宅内で使うのならフルサイズでもいいじゃないかと思うかもしれませんが、ちょっとした書き物にはコンパクト型は便利ですし、家族がいれば静かで困ることはありません。