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《詳報》Scrivener 3 for Windows(3/5) ──注目の新機能

今回はver.3の新機能から、注目したいものを紹介します。

Windows版のver.3では、これまでMac版だけで利用できていたさまざまな機能が使えるようになっています。公式ブログでは新機能として多くのものがあげられていますが、中でも次のものが重要でしょう。

  • 刷新されたユーザーインターフェース
  • あとから定義を更新すると本文も更新されるようになった段落スタイルや文字スタイル
  • EPUB3もサポートしたコンパイル機能
  • 本文とは別に資料などを表示できる「コピーホルダー」機能
  • 毎日の執筆文字数を管理できる「ライティング履歴」機能
  • コルクボード表示のさまざまな機能の向上
  • 完全に作り直されたテキストと検索のエンジン
  • 64ビット対応

ここでは注目の機能をスクリーンショットとともに紹介していきます。なお、まだリリースされたばかりですので、誤りを含んでいる場合もありえますがご了承ください。また、日本語関係については次回紹介する予定です。

ver.1との互換性

Windows版のver.1で作成したプロジェクトは、コンバートして読み込めます。通常と同じく[ファイル]→[開く…]を選んでscrivxファイルを開くと、図のようなダイアログが表示されます。「OK」ボタンをクリックすると、元のプロジェクトを「(プロジェクト名)バックアップ」の名前で保存したうえで、ver.3用にコンバートしたプロジェクトを保存します。

なお、ver.3用で保存したプロジェクトは、拡張子は同じでもver.1では開けないので注意してください。ver.3で作成・保存したプロジェクトをver.1で開きたいときは、[ファイル]→[エクスポート]→[as Scrivener v1…]を選んで書き出します。

インターフェースの刷新

次の図はver.1のツールバーです。リリースされたのは10年前ですから、今どきのデザインとはずいぶん違います。

次の図はver.3のツールバーです。アイコン類はかなりすっきりしました。

使い勝手も変わっています。たとえば、中央にある「START HERE」の部分は操作に応じて表示が変わります。クリックすると入力欄になり、語句を入力して検索欄として使えます。WebブラウザーのURL欄のようなものとイメージするとよいでしょう。

なお、Mac版では複数のプロジェクトを1つのウインドウにまとめてタブで切り替える機能がありますが、Windows版にはありません。

テーマ

画面の色使いを大胆に変更する「テーマ」機能に対応しました。デフォルトでいくつかのパターンが搭載されていますし、カスタマイズや自作もできます。

テーマを変更するには[ウィンドウ]→[Themes]以下から選びます。次の図は「Dark Mode」です。ただし、テーマの変更を適用するにはアプリケーションを再起動する必要があります(Mac版ではすぐに反映されます)。

テーマをカスタマイズするには、[ファイル]→[Options…]を選び、「表示」タブから設定します。カスタマイズした結果をファイルとして保存するには、ウインドウ左下の「Manage」ボタンから操作します。複数のテーマをファイルとして保存しておくと、切り替えて利用できます。

コピーホルダー

プロジェクトウインドウはエディタを2画面で表示できましたが、さらに画面を分割する「コピーホルダー」という機能が追加されました。ただし1つのドキュメントを表示するだけであり、連結表示、カード式のコルクボード表示、アウトライン表示はできません。機能の名前からいっても、画像資料や人物設定などを表示するためのものといえるでしょう。

クイックリファレンス

資料を表示するという点では、Mac版ではver.2からあった「クイックリファレンス」機能も追加されました。これはプロジェクトウィンドウとは別のウィンドウで単一のドキュメントを表示するものです。コピーホルダーと同様に、連結表示、コルクボード表示、アウトライン表示はできませんが、複数開くことができるので、同時にたくさんの資料を開きたい方には有用でしょう。

クイックリファレンスのウィンドウには、ver.3からの新機能「ブックマーク」も統合されています。これはWebブラウザのブックマークと同じで、好みのアイテムを登録しておくと、内容を右側に表示するものです。ただし、階層は扱えないため、フォルダを登録しても下位のアイテムへ移動することはできません。

クイックリファレンスとブックマークの使い方には作品に応じた工夫が必要になるでしょう。たとえば、登場人物の設定を1人=1テキストで書いておき、「登場人物」という名前のフォルダへまとめている場合、「登場人物」フォルダをブックマークへ登録しても個別の人物のファイルへは移動できません。全員をブックマークするか、登場人物全員の設定を1つのテキストに書いてブックマークする必要があります。

コルクボード表示の機能向上

コルクボード表示ではカードを自由な位置に置けるようになりました。これはMac版ではver.2からあった機能ですが、Windows版でもサポートされました。モードを切り替えるには、[表示]→[コルクボードのオプション]→[可変]オプションをオンにします。オフにしても位置は保存されるので、再びオンにすれば再現されます。

この表示形式はプロット作成時の箱書きに使えるということで、映画やゲームの脚本家、漫画家など、文筆家以外の方も利用するケースが多いようです。大きなディスプレイいっぱいにウィンドウを広げて使ってみてください。

ほかにも、カードをラベル別にスレッドで並べる「Arrange by Label」機能が追加されました。複数のストーリーラインやテーマを扱う場合に便利です。

ライティング履歴

執筆した文字数を集計して進捗状況を管理できるようになりました。自動的に記録されるので、何も設定する必要はありません。[プロジェクト]→[ライティング履歴]を選ぶと図のようなウィンドウが開きます。月ごとの合計や、1日あたりの平均など、基本的な集計もできます。

細かく管理したい場合は「エクスポート…」ボタンをクリックすると、CSV(カンマ区切り)形式で出力できます。これはExcelで直接開くことができる形式ですが、年月日が英国式であるなどの理由で、前処理が必要です。

正規表現

検索置換に正規表現を使えるようになりました。次の図は「新[あ-ん]*機能」という条件で検索し、ヒットした語句が黄色で強調されています。

コンパイル機能の向上

コンパイル機能は、ver.1ではプロジェクト内のテキストをまとめる基本的な機能に限られていましたが、語句の置換に正規表現を使えるようになるなど、大幅に向上しました。

当サイトで配布している「投稿サイト・連載小説用サンプルファイル v2.0.0 for Windows」でも、自動的に字下げをしたり、青空文庫式で書かれたタグをpixiv式やHTMLへ変換するために正規表現による置換を使っています。

まだまだたくさん!

ここではよく話題にあげられる機能を紹介しましたが、ほかにもたくさんの新機能があります。詳細を知りたい方は、オフィシャルのユーザーマニュアル(英語)を参照してください。このマニュアルはレターサイズのPDFで、700ページ以上ある本格的なものです。製品を購入しなくても誰でもダウンロードできます。

→「User Manuals」(L&L)

ただし、バージョン番号がMacと同じになったからといって、機能が完全に同一になったわけではありません。たとえば、複数のプロジェクトを1つのウインドウにまとめてタブで切り替える機能はMacのみです。逆に、キーボードショートカットのカスタマイズはWindows版のみの機能で、Macではできません。開発元は小さな会社であり、大規模な開発ができる大手とは事情が違います。

次回は日本語環境での利用について紹介する予定です。

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