Scrivener for iPadユーザーのためのキーボード選び──(8)LACOIN「TK02」

個別製品レビューの3台目は、LACOIN「TK02」です。事情により、商品紹介のリンク先はアマゾンです(アフィリエイト収入はサーバーの維持に充てています)。

筆者が調べたところ、国内でこの製品を扱っているのはアマゾンに出品している「LACOIN-JP」だけで、商品説明もそのページでしか見つかりませんでした。中国の深圳にあるメーカー(あるいは商社?)らしいのですが、メーカー自身のWebサイトさえ見つかりません。説明書にはドメインが書かれていて、whoisで調べると2019年に取得されているのですが、Webサーバーは動いていないようです。

とはいえ、筆者自身はアマゾンから購入できましたし、カスタマーレビューにはおそらく本当に購入した一般の人が書いたものだろうと思われるコメントがいくつもついているので、少なくとも今のところ流通に問題はなさそうです。このような状態ではあるものの、非常に特徴的な製品ですのでここでレビューしてみます。

お約束:記事の執筆にあたってはできるかぎり検証しましたが、誤りがないことを保証するものではありません。購入にあたってはご自身の責任で判断していただきますようお願いします。

製品概要

まずは例によってチェックポイントを順に見ていきましょう。

キー数とサイズ:軽量化を最優先したウルトラコンパクト型です。キー数はかなり減らされていますが、それでもFnキーとの同時押しで、iPad特有のキーやファンクションキーが使えます。長文執筆に便利なHome/End/Page Up/Page Downキーは、Fn+矢印キーに割り当てられています。

キー配列はUSベースです。Fnキーとの組み合わせで「かな」「英数」キーも使えますが、押しづらい位置にあるので、日英の切り替えはControl+スペースキーを使っています。なお、Windowsと接続したときはJIS配列になります(後述)。

形状:折り畳み型。キーは中央で完全に分割されているうえに、Vの字状に曲げられていて好みが分かれそうです(後述)。

キーピッチ:19mm。18mmでも打てなかった筆者でも快適に使えます。ただし、Pキーの右側にある記号類のキーは横幅が短く、最上段のキーは縦幅が短くなっています。このため、鉤括弧や長音はやや打ちにくいです。

電源:充電式電池を内蔵しています。充電端子はMicro USB Type-Bで、充電用のケーブルが付属します。

Bluetoothキーボードでは電池残量がわからないことが多いのですが、Fn+Rキーを押すと残量をランプの点滅を使って4段階で示します。電源のオンオフは本体の開閉と連動しているので、電源スイッチはありません。内蔵電池はおそらくUSB端子付近(本体左半分の右端あたり)にあると思われます。

Bluetoothのバージョン:5.0です。反応は体感的にも良好です。3台までペアリングして、接続先を切り替えて使用できます。

商品説明のページによれば、iPadには正式に対応しています。iPad mini 5は非対応と書かれていますが、筆者の環境では問題ではとくに固有の問題はないように思えます。

本体を持ったときの感じ:

①頑丈さ:華奢な印象はありません。ただし、中央の折りたたみ部分にどの程度の耐久性があるかはわかりません。もっともこの価格ですから、接触不良になるほど使ったら買い換えても惜しくないでしょう。

②外装:毛羽立った肌触りがある素材が使われていて、滑り止めにも良さそうです。表裏ともグレーで、多少の汚れは目立たないでしょう。

③重量感:140グラムで、iPadやiPhoneと合わせて持ち歩いても邪魔にならない重さです。

写真)iPhone XRとの組み合わせ

④安定性:折り畳み型ですので、安定した平らな場所で広げる必要があります。喫茶店のようなテーブルがある場所では問題ありませんが、バスや鉄道のようにテーブルがない、あるいは、あっても安定しない環境では、何か工夫が必要でしょう。

キーを押した感じ:

①構造:不明ですが、パンタグラフ構造だろうと思います。

②ストローク:不明ですが、浅いのでぐらつきは感じません。

③押下圧:不明ですが、軽いほうです。Apple「Magic Keyboard」と同じくらいだろうと思います。もう少し「押した感じ」があるといいのですが、それは欲張りでしょう。

④静音性:パチパチと軽い音はしますが、BGMが流れているか、列車内やロードサイドのファミレスのように常に一定程度の騒音がある場所であればまず問題はなさそうです。

特殊な形状

最初に目を引くのが、完全に二分割されたキーボードです。この方式は、デスクトップ用でもまれにエルゴノミクス製品と称して採用されます。

慣れていないと面食らうかもしれませんが、ホームポジションができている人であればすぐに慣れるでしょう。筆者もこのような二分割の製品は初めてでしたが、左右の手を無理に寄せる必要がないので、むしろゆったりとした体勢でタイプできます。机に向かって置くときだけでなく、布団やコタツから顔と両手だけ出して原稿を書きたいようなズボラスタイルにも良さそうに思えます。

特殊なキー配列とAltキー

キー配列は一見するとUS配列ですが、一部のキーにはダークレッドでJIS配列の印字があります。つまり、US配列を優先しているものの、必要に応じてJISと読み替える必要があるということです。

写真)JIS配列lのキーはダークレッドで印字されている

この製品は、iOS、macOS、Windows、Androidに対応しますが、OSに応じたモード切り替え機能はなく、自動的に接続相手を調べて切り替えるようです。これにあわせてキー配列も変わるので、同じキーを押しても、iOSでは鉤括弧を、Windowsではアットマークを出力します。

モードを手動で切り替える必要がないのは便利ですし、iPadとMacを併用するユーザーには同じUS配列が使えるのですが、iPadとWindowsを併用するユーザーは頭の中で配列を切り替える必要があります。

そしてもう1つ、Macユーザーにとっても悩ましいことに、CommandキーとOptionキーは通常のMac用キーボードと逆の配置です。これはOSの設定で入れ替えられるので問題ないように思えますが、CommandキーにOption機能を割り当てると、Fn+F3でホーム画面を開くなどの機能が効かなくなります。この現象は筆者の手元にある3台のすべてで同じでした(iPad Air 4、iPad mini 5、iPhone XR、いずれもOSは14.3)。他のキーボードでこのような現象は起きないのでTK02固有の問題と思われます。

ただし、iOSのScrivenerでOptionキーを押す機会は「Command+Option+Nキーでフォルダを作る」「Command+Option+矢印キーでバインダーのアイテムを移動する」くらいですし、どちらもそれほど多用するものではなく、画面をタップすれば代用できます。そこでOption(Alt)キーにCommandの機能を割り当てつつ、Commandキーはそのまま、つまり、Commandキーが2つある状態で使っています。

ならば元からあるOption(Alt)キーを無視すればよいように思うかもしれませんが、Macの日本語キーボードに慣れ切った筆者としては、Xキーのおおよそ下あたりにCommandキーがほしいのです。Zキーの下では親指をかなり折り込まないと届かないので、指先の感覚だけでは押せなくなってしまいます。

写真)Xの下にCommand、Zの下にOptionがほしいのだが

ただし、iOSではOptionキーとの同時押しでアクセント記号をつけるので、ヨーロッパ言語をタイプする方にとっては悩ましいかもしれません。それ以外の言語についてはわかりません。

なお、Fnキーとの同時押しで「かな」「英数」キーも使えますが、押しづらいので、日英の切り替えにはControl+スペースキーを使っています。

個人的な使い方

軽い、静か、左右分割、iOS・Mac併用派に見やすい印字ということで、購入前の期待以上に気に入っています。筆者はカタカナの単語を打つことが多いので、長音をやや打ちにくいことが気になりますが、ほとんどのキーは本来のサイズがありますし、なによりも小ささが優先されがちな折りたたみキーボードで19mmのキーピッチを確保してくれたことは本当にありがたいです。

CommandキーがXの下にないことと、物理Altキーの機能割り当てがおかしい点は残念ですが、iOS専用と割り切れば個人的には問題はありません。

なお、例によってCaps LockキーにはControlの機能を割り当てています。

結語

製品としての不満はほとんどありません。この値段でこれが手に入るのなら十分に満足です。もしも筆者がこのようなキーボードを必要とするタイプのライターであれば、いつ買えなくなってもよいように数台買いためたかもしれません。この手の製品はいつまで同じものが買えるかわかりませんし、次に出る製品も同じように気に入るかもわかりません。

ただし、サポート体制には不安が残ります。メーカー保証は18か月とされていますが、メーカーの公式サイトもなく、たとえば初期不良だった場合や、保証期間内に何かあったときの対応がどうなのか確証が持てません。自分で買って自分で泣く分にはともかく、他人に大っぴらに推薦はしづらいです。

おそらくこれは、アマゾンがない時代であれば、秋葉原の小さなショップで「直輸入品・ショップ保証1週間」として売られるようなものだったろうと思います。筆者もそういったものを買って、忙しくて使えない間に1週間を超えてしまい、通電さえしない初期不良品だったにもかかわらず交換を断られた経験があります。商品の企画がよくても、サポートに不安があればリスクは残ります。

その程度のリスクを引き受ける覚悟があり、特徴や不具合とうまくつきあえれば、ユニークなガジェットとして愛用できるでしょう。

次回はいよいよ高級モバイルキーボードの本命、Happy Hacking Keyboardをとりあげます。

(つづく)

追記(2021/01/27)

書き忘れてしまいましたが、iOS端末と接続すると、「設定」アプリの「Bluetooth」に警告が表示されます。iPhone XR、iPad mini 5、iPad Air 4のいずれでも同じです。ただし、いまのところ筆者の環境で影響が出ているのかどうかわかりません。

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