忘れていたわけではないのですが、前回の更新から5か月近く経ってしまいましてすみません。気を取り直してまとめの最終回です。
実用的な新機能は多いが日本語対応に不満が残る
Ver.3を一言でまとめれば、「実用的な新機能は多い」しかし「日本語対応は中途半端すぎる」ということになるでしょう。
クイックリファレンスやコピーホルダーにより、資料のウインドウを多数開くことができるようになりました。ダークモードや正規表現を使った検索は、ほしい人にはかなりうれしい機能だろうと思います。
その一方で、オプションやコンパイルの設定画面どころか、プルダウンメニューの日本語表示さえ中途半端です。デフォルトの諸設定が英語向けなのは仕方がないとしても、縦書きにも対応しません。
Windows・Macの併用派には待望
ScrivenerにはmacOS版とiOS版もありますが、macOS版とWindows版を併用する方にはワークフロー改善の観点から待望のバージョンアップとなるでしょう。
Scrivenerのプロジェクト(個別の作品のファイル/フォルダ)は、Windows版のVer.1とmacOS版のVer.3には互換性がなく、コンバートが必要になります。Windows版のVer.3とmacOS版のVer.3はコンバートなしで直接相互に開くことができます。
筆者は、デスクトップではMac、ノートではWindowsを使うことが多いのですが、両方Ver.3にすることで、コンバートなしに執筆を続けられる環境が整いました。Windowsはノートの選択肢が広いので助かるのです(いま筆者が使っているノートはHPのペン対応機ですが、旧モデルだったのでそこそこ安く買えました)。
価格に見合うか、よく考えよう
結局のところ、購入(あるいはアップグレード)するかどうかは、価格に見合うかどうかという点に集約されるでしょう。見合うと思えば買えばいいし、そうでないと思えばフリーのものを含め別のツールはいくらでもあるので、これを機会に乗り換えてしまうのもいいでしょう。絶対にこれがいいなどと言う気はまったくありません。
たとえばクラウドを介した同期は得意ではありませんし、今回のバージョンアップでもその点の機能向上はありません。縦書きもありません。このあたりを重視するのであれば、Ver.3は期待外れということになります。
一方、Ver.3で追加された機能に魅力を感じるのであれば、3,000円もしないアップグレード料金はどうということはないかもしれません。たとえば筆者は検索やコンパイルに正規表現が使えるようになっただけで価値があると思っています。
macOS版は最新のOSでVer.2が使えなくなったので、Scrivenerを使いたいのであればアップグレードするしか道はありません。しかしWindows版ではWindows 10でもVer.1が使えます。つまり、アップグレードせずにScrivener 1を使い続けるという道もあるのです。価格に見合うかどうか、よく検討されることをおすすめします。
具体的にVer.3を知りたい方は……
Windows版Scrivener Ver.3専門の解説書を書きました。BNNより発売中です。リフロー型の電子書籍版もあります。新規ユーザーにも、アップグレードユーザーにもおすすめします。ぜひ本書でScrivenerの機能を効率よく把握し、作品の執筆に役立てて下さい。