※速報のため、記載内容に誤りを含むおそれがあります。誤りが判明した場合、適宜修正します。
英国Literature & Latte社が開発する長文執筆向け統合型アプリケーション「Scrivener」macOS用の新バージョンとなるver.3.0がリリースされました。公式サイトでは、無料体験版の配布が始まっています。
7月下旬以降、公式ブログでは新バージョンの紹介記事が10本以上も公開され、発売前から新しい機能や徹底的に作り直された機能について詳しく知ることができました。
しかし実は、日本のユーザー(あるいは、将来ユーザーになるかもしれない方々)にとって最も気になると思われる新機能には触れられていませんでした。取り急ぎ、速報としてそれらをご紹介します。
- 縦書きでの執筆に対応した
- インターフェース(画面表示)が日本語になった
その1:縦書きで執筆できる
まずは縦書きでの執筆です。画面をご覧ください。
通常のエディタだけでなく、もちろん執筆モードでも縦書きになります。
日本語の組版ルールに対応したわけではない
ただし、あくまでもエディタのレイアウトが縦書き対応になっただけです。禁則文字の指定さえできません。長音(ー)や促音(っ)が行頭に来るだけでも気になる方にとっては悩ましいところかもしれません。
また、以前と変わらず、ルビ、傍点、縦中横、割注などの日本語特有の組版ルールにも対応しません。結局、本格的な日本語組版には別のツールを使うべきである状況に変わりはありません。
一部機能も日本語には対応せず
これも旧バージョンと同じですが、一部の機能は、そもそも日本語に対応しません。たとえば、新機能の1つに「言語フォーカス」があります。これは、本文中でカッコに括られた部分や、接続詞などの品詞を指定して強調表示するもので、カッコで括られた会話文や引用部分が全体のどれだけあるか、接続詞が原稿のどこにあるかなどが一目でわかる機能です。大変興味深い機能ですが、日本語の文章には全く機能しません。
次の図は、英文で「言語フォーカス」を使った例です。引用符で囲まれた部分以外がグレーになっているのがわかります。
次の図は、日本語の文に使った例です。画面は日本語化されていますが、パネルウインドウには「ゼロ」と表示されていて、日本語の文章には対応しないようです。表示されているいずれの品詞でも同じです。
日本語への対応に関して過剰に期待するのはやめておきましょう。
手順
現在開いているプロジェクトを縦書きにする:
[表示]→[テキスト編集]→[垂直レイアウトを使用]
(訳が不自然な点については後述)
その2:インターフェースが日本語に対応
プルダウンメニュー、ツールチップ、ダイアログでの説明など、画面表示が標準で日本語に対応しました。たとえば、次の図は環境設定の中のものです。
日本語表示へ切り替えるのに操作は不要です。アプリを起動すると、OSの設定に従って自動的に日本語に設定されます。
macOS版のver.2.x用には、「Sekai Amata」氏が作成された非公式日本語パッチがありました。実際にやってみるとわかりますが、Scrivenerほどの規模の画面表示をまるごと日本語にするのは大変な作業であり、まさに労作と呼ぶべきものです。しかし、初心者にはその存在が知られていなかったり、アプリ本体のバージョンアップのたびに適用し直す必要があるなど、純正機能でないための悩ましさもありました。今後ユーザーはこのような手間をかける必要がなくなります。
これに伴い、ver.2用非公式パッチと、ver.3の公式日本語表示で使われている用語を比べると、訳が異なるものがあります。たとえば「Synopsis」は、非公式パッチでは「梗概」と訳されていましたが、公式では「概要」となりました。旧バージョンで非公式パッチを使っていた方は注意してください。
なお、一部に英語のまま残っている部分があったり、不自然あるいは奇異な翻訳がなされていることもあります。これらはおそらく今後のマイナーバージョンアップで修正されていくものと思われます。それまでは生温い目で見守ってあげましょう。
ただし、これならばむしろ英語のほうがいいという方もいるでしょう。インターフェースの言語はOSとは別に、9つの言語から任意に指定できます。
手順
表示に使う言語を変更する:
[Scrivener]→[環境設定…]を選びます。ウインドウが開いたら「General」タブ→「言語」カテゴリ→「インターフェースの言語」を「Translation」へ変更します(実際には英語になります)。変更を適用するにはアプリを再起動してください。
新バージョンには多くの新機能が追加されるともに、既存機能の見直しがあるので、とまどうことも少なくないと思いますが、取り急ぎ日本のユーザーに要チェックの2点をご紹介しました。
なお、直販サイトでは販売も始まっていますが、Mac App Storeでの発売は数日遅れるようです。とはいえ、無料体験版はアプリを起動した日だけの合計で30日間、すべての機能を使えます。とりあえず、購入手続きは後回しにしてもよいのではないかと思います。